住友ベークライト株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:鍜治屋 伸一)は、哺乳センシングデバイス・システム開発をしました。当開発品は、赤ちゃんの舌の動きを計測し、口を動かして母乳を飲む力である吸てつ力を数値化します。これにより、母親は赤ちゃんの哺乳能力を客観的に把握できるようになり、産後の授乳に関する悩みを軽減することが出来ます。
哺乳センシングデバイスの使用イメージ
【開発の背景】
母乳育児は赤ちゃんの健康や成長に重要な役割を果たす一方で、吸てつの状態がわからない場合、母親にとって育児は大きな負担となることがあります。これまで、吸てつ状態の把握は、簡単に測定できる方法が無いため、人の主観的な感覚に頼ることが多い状況でした。このような背景から、近年では科学的な根拠に基づいた育児支援の必要性が高まっています。
【哺乳センシングデバイス・システムについて】
住友ベークライトは摂南大学理工学部電気電子工学科 西恵理准教授 との共同研究を通じ、新開発のセンサデバイスを用いて赤ちゃんの吸てつ状態を可視化することに成功しました。この技術により、吸てつ時の舌運動を客観的に把握できるようになり、適切な母乳育児指導の向上が可能となります。また、慶應義塾大学医学部 小児科学教室 有光威志 専任講師・鳴海覚志 教授監修のもと行った調査では、このデバイスを授乳指導に用いると、通常の授乳指導に比べて、授乳の自信度が約30%向上することが確認されました。育児に対する不安の軽減や心理的安全性の向上に寄与し、母乳育児指導における有効なツールとなる可能性が示されました。
哺乳センシングデバイス・システム
【本製品の特徴】
今回開発したデバイスには、当社の独自素材であるシリコーンゴム「DuraQ(R)導電ペースト」※1を採用しました。これにより、デバイスは柔軟性に優れ、自然で快適な装着感を実現しました。この素材は、繰返し伸縮時の抵抗変化が小さいことから、安定的な波形データ取得を可能にし、デバイスの実用性を向上させています。また、2つのフォースセンサを設置することで、舌の力に加え運動性を評価できることが特徴です。
さらに、デバイスの測定結果に加え、母親および助産師の授乳チェックシートをあわせることで、授乳指標を総合的に把握できるPCソフトウェアも同時に開発しました。これらの結果を見ながら助産師のアドバイスが受けることができます。さらに助産師が簡易に操作できるようスマホアプリの開発も進めています。
※1DuraQ(R)導電ペースト
https://www.sumibe.co.jp/product/s-bio/custom/duraq/duraq-cp/index.html
図:哺乳センシングデバイスを用いた計測結果
【哺乳センシングデバイスの使用方法】
- 助産師がデバイスを手に装着し、センサーが付いた小指部分を赤ちゃんの口の中に挿入します。
- 赤ちゃんは、本来備わっている原始反応である吸てつ反射を起こします。これにより、センサーが舌の動きを計測し、赤ちゃんの哺乳能力を可視化します。
- 授乳指標の数値化を行い助産師からデータに基づいたアドバイスを母親へ行います。
図:哺乳センシングデバイスの使用方法
【今後の計画】
本開発品により、科学的データに基づく的確なアドバイスが可能となり、授乳指導の質の向上が期待されます。また、母親の安心感を高めることで、母乳育児の普及促進が可能になると考えられます。
現在、効果検証結果を用いて、産後ケア施設・自治体などへのご紹介を行い、複数の施設に試験導入を実施しています。一部施設では有料サービスを開始しており、2027年の上市を目指しています。
加えて、アプリ機能の充実を図り一般家庭への普及にも取り組む計画です。また本開発品で得られる舌運動データから、母乳摂取量の予測や、疾患との関連性の研究を進める予定です。さらには舌運動は高齢者の嚥下障害や、構音障害とも関連する可能性があることから、乳児向け市場に留まらず、医療・福祉分野全体での活用を推進し、将来的には、これらの展開を通じて年間売上65億円以上の達成を目指しております。
本件についてのお問合せ:
住友ベークライト株式会社 S-バイオ事業部 TEL: 03-5462-4831
お問合せフォーム: https://inquiry.sumibe.co.jp/m/j_s-bio